突然、目の奥に強い痛みを感じたり、視界が急にぼやけたりした経験はありませんか?これらは「急性緑内障発作」という重篤な症状の前触れかもしれません。緑内障は国内でも視野障害の大きな要因となる病気で、特に急性の発作を放置すると、短時間で視力や視野に深刻なダメージを及ぼすリスクがあります。そんな不安を感じている方に向け、今回の記事では急性緑内障発作の症状や原因、具体的な治療方法を詳しく解説します。自分や大切な人の視力を守るための行動を一緒に考えていきましょう。急性緑内障発作とは?急に眼圧が上昇することで、目の奥の激しい痛みや視野の異常を引き起こすのが急性緑内障発作です。国内で多く見られる慢性タイプの緑内障とは異なり、突発的かつ短時間で症状が悪化しやすいという特徴があります。突然の視力低下や強い頭痛をともなうため、発作に気づいたらすぐに眼科を受診することが望まれます。適切な治療を行わないまま放置すると、視力を取り戻すのが難しくなるケースもあるため、発作の仕組みやリスクを知っておくことが大切です。そもそも緑内障とは?眼の内部を循環している房水(ぼうすい)が適切に排出されず、眼圧が慢性的に高くなることによって視神経が障害を受ける病気です。日本では高齢化にともない患者数が増え、失明原因の上位に挙げられます。初期の段階ではほとんど自覚症状がないまま進行することが多く、定期検診で異常を発見するケースも少なくありません。緑内障は大きく分けて、ゆっくり進む慢性型と、急激に発作を起こして症状が悪化する急性型に分かれます。急性緑内障発作と慢性緑内障の違い慢性型は、視野がじわじわと欠けていくため気づきにくい一方、急性型は突然眼圧が上がることで激しい痛みや吐き気などの全身症状が出ます。慢性型は長期的に視神経へダメージを蓄積しますが、急性緑内障発作は短時間で視力を損なうリスクが高いため、迅速な治療が不可欠です。「目のかすみが急にひどくなった」「光が眩しすぎる」といった異常を感じたら、早めに眼科を受診しましょう。急性緑内障発作の主な症状眼圧の急上昇により、普段と違う見え方や強い痛みが突然現れることがあります。緑内障の発作による症状を把握しておくと、万が一自身や身近な人がトラブルを感じた際、いち早く対策をとることが可能です。主な症状としては以下が挙げられます。視力・視野への影響強い目の痛みや頭痛・吐き気それぞれ順番に解説していきます。視力・視野への影響急に視力が落ちる、もやがかかったように見えるなど、見え方に顕著な変化が生じるのが特徴です。光の周りに虹のような輪が見えたり、視野の一部が暗く感じたりする人もいます。これらは角膜の浮腫(むくみ)や眼圧変化による影響が原因です。日常生活において、「なんだか視界がおかしい」と思うことがあれば、放置せずに専門の医師に相談しましょう。強い目の痛みや頭痛・吐き気急性緑内障発作でよく見られるのが、目の奥の強い痛みとそれに伴う頭痛です。場合によっては吐き気や嘔吐を引き起こすなど、目の不調だけにとどまらず全身に影響を及ぼします。こうした症状は頭痛薬だけで対処しようとしても根本的な解決にはつながりません。特に目の充血や触れたときの違和感がある場合は、眼圧の異常を疑うべきサインといえます。急性緑内障発作の原因と危険因子隅角(ぐうかく)と呼ばれる房水の排出口が狭い方や、加齢による水晶体の肥厚など、急性緑内障を起こす要素はいくつか存在します。狭い隅角と眼圧の急上昇生活習慣や年齢による影響潜在的なリスクを把握しておくことで、日頃から予防や早期対策が取りやすくなります。狭い隅角と眼圧の急上昇房水が排出される隅角が狭いと、日常のちょっとしたきっかけでも房水の流れが詰まりやすくなり、眼圧が急激に上がることがあります。隅角が狭い原因には生まれつきの形態や加齢などがあり、特に50代以降から緑内障の発作が起こりやすくなる傾向が見られます。また、暗い場所で瞳孔が開いたときなどに、一時的に隅角が閉塞する場合もあるため注意が必要です。生活習慣や年齢による影響加齢にともなう水晶体の肥厚や筋力の低下が眼圧をコントロールしにくくする要因です。さらに、ストレス過多や長時間のパソコン作業による目の疲れは、全身の血行不良やホルモンバランスの乱れを招き、結果的に眼圧が変動しやすくなります。以下の生活習慣はリスクを高める可能性があります。過度の飲酒や喫煙 睡眠不足や不規則な生活 水分の摂りすぎ・摂らなさすぎ 長時間のスマートフォンやパソコン使用 これらの要素が複合的に働くことで、急性緑内障発作につながる症状が出る場合もあるため、日頃からセルフチェックを心掛けましょう。急性緑内障発作の検査・診断方法医療機関では、眼圧や隅角、視神経の状態などを総合的に評価して診断します。発作が疑われる場合は、早急に受診することが必要です。検査によっては事前準備が必要な場合もあるため、症状が重いときほど早めの来院が望まれます。眼圧測定と視野検査眼に空気を吹きかける方法や、直接機器を当てる方法など、いくつかの手段で眼圧を計測します。急性緑内障の発作時には基準値を大きく超える数値が出ることが多いです。その後、視野検査を行い、どの部分が見えにくくなっているかをチェックします。視野の欠損パターンによっては緑内障特有のダメージが推測できるため、治療方針を決めるうえで重要な手がかりになります。隅角検査など詳細な検査ゴニオレンズという特殊なレンズや機器を使って隅角の広さや形状を直接観察し、どの程度詰まりが起きているかを確認します。また、視神経乳頭の形状を調べるために眼底検査も行われ、視神経にどれほどダメージが及んでいるかを把握します。検査の結果によっては、別の原因疾患がないかどうかを調べるために追加の検査が行われることもあります。急性緑内障発作の治療方法発作を起こしたときは、まず眼圧を下げて視神経へのダメージを抑えることが最優先です。緑内障の発作に対処する症状を軽減するため、薬物療法や外科的手段が組み合わせて用いられます。いずれの治療方法でも、早期に手を打つことで視力を守りやすくなります。薬物療法:点眼薬や内服薬眼圧を低下させる目的で、点眼薬や内服薬などが処方されます。点眼薬には、房水の産生量を抑えるものや排出を促進するものがあり、発作時は一時的に複数の薬を併用することも珍しくありません。内服薬や静脈注射によって短時間で眼圧を下げる処置も行われます。こうした薬物療法によって症状が緩和されても、再び発作が起こる可能性があるため、医師の指示に従った継続的な治療と経過観察が不可欠です。レーザー治療や手術療法薬物療法で十分に眼圧が下がらないときには、レーザーによって隅角を広げる「レーザー虹彩切開術」や「レーザー繊維柱帯形成術」が行われます。手術療法としては、房水の排出路を新たにつくる「線維柱帯切除術」や、排出を促すデバイスを挿入する方法が検討されます。症状の進行度や患者さんの全身状態によって選択肢が変わるため、担当医としっかり相談して決めることが重要です。予防のためにできること急性の緑内障による発作を避けるには、日常的なケアと定期検診が欠かせません。生活習慣の見直しや医療機関での早期発見を徹底すれば、視力が急激に損なわれるリスクを軽減できます。定期的な検診と早期発見の重要性40代を過ぎると緑内障のリスクが高まるため、年に1回程度は眼科で検診を受けるようにしましょう。眼圧や視野の検査によって、症状が出ていなくても潜在的な緑内障を発見できる場合があります。隅角が狭い人や家族に緑内障の方がいる場合は、より早い時期から定期検査を心掛けることが望まれます。いち早く異常を見つけて適切な対処をすることで、視力を守る可能性が大きく高まります。生活習慣の改善とストレス管理日頃の生活習慣が眼圧に影響することも少なくありません。以下のポイントを意識してみましょう。規則正しい睡眠と適度な運動を行い、血行を促進する バランスの取れた食事を心がけて、過度な塩分・糖分を控える 長時間のパソコンやスマートフォンの使用後は意識的に休憩を入れる アルコールやタバコを控え、ストレスを溜め込まない工夫をする これらの習慣を見直すだけでも、緑内障の発作を起こす症状を抑えられる可能性があります。ときには専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った予防策を試すことが大切です。まとめ急性緑内障発作は、わずかな時間で目に深刻なダメージを及ぼす怖い病気です。特に視力低下や強い目の痛みを感じたら、すぐに眼科を受診する必要があります。慢性の緑内障は自覚症状が少ないため見逃しやすい一方、急性の発作は突然の激痛や視野の異常をともなうことが特徴です。狭い隅角や加齢、生活習慣といった要素が重なると、発作のリスクが高まります。日頃から定期的に検診を受け、隅角や眼圧の状態を把握しておけば、早期に対策を講じやすくなるでしょう。生活習慣の改善やストレスケアで眼の健康を保つことが、発作予防につながります。いざというときには自己判断を避け、専門医のもとで正しい治療を受けることを心掛けてください。