「白内障は両目に起こるものではないの?」「片目だけ見えにくいけれど、白内障の可能性はある?」と不安に感じていませんか。白内障は両目に生じることが多いものの、水晶体の濁り方や進行速度には左右差があり、片目だけ症状が目立つケースもあります。見えやすいほうの目が補うため、変化に気づきにくいことも少なくありません。片目だけ見え方が変わる背景には、左右で白内障の進行速度が異なることに加え、過去のけがや片目に起きた炎症などが関係する場合があります。糖尿病やステロイド薬などが白内障の進行に影響していても、症状の強さには左右差が生じることがあります。また、急な視力低下や視野の欠けは、白内障以外の病気による可能性もあるため注意が必要です。この記事では、白内障が片目だけに起こる理由や主な症状、眼科を受診する目安、手術を考えるタイミングと注意点を解説します。片目だけのかすみや見え方の左右差が気になっている人は、ぜひ参考にしてください。白内障は片目だけに起こることがある白内障は、目の中でレンズの役割を担う水晶体が濁り、見え方に影響が生じる病気です。片目だけに白内障が起こることもあれば、両目に濁りがあっても、片方だけ症状が強く現れることもあります。白内障が片方の目から反対の目へ移るわけではなく、それぞれの目で水晶体の状態が変化します。日常生活では両目を使って物を見るため、片目の見えにくさを自覚しにくい場合があります。見えやすいほうの目が補っていると、片目ずつ見たときに初めて左右差に気づくこともあるでしょう。ただし、片目だけ見えにくくなる原因は白内障とは限りません。角膜や網膜、視神経などの病気でも同様の症状が起こるため、見え方の左右差が続く場合は、自宅で原因を判断せず眼科を受診することが大切です。眼科では視力検査だけでなく、水晶体や眼底などの状態も調べます。白内障が片目だけ進む主な原因白内障の多くは加齢に伴って生じますが、両目が同じ速さで進行するとは限りません。また、片目に受けたけがや炎症、一部の眼内手術などが左右差に関係するケースもあります。診察を受ける際は、目や全身の病歴、使用している薬についても医師へ伝えましょう。加齢による進行速度の左右差加齢性白内障は、年齢とともに水晶体の透明性が失われることで起こります。ただし、水晶体の濁りが始まる位置や濁りの程度、進行速度は左右で同じとは限りません。そのため、両目に白内障があっても、片方だけ視力低下やまぶしさが目立つ場合があります。左右差が小さい段階では、普段どおり両目で見ているだけでは変化を自覚しにくいことがあります。眼科では視力検査や細隙灯顕微鏡検査などを行い、それぞれの目の水晶体を観察します。片目の見えにくさが続いているときは、症状の強さだけで進行度を判断しないことが大切です。目のけがや手術歴目に強い衝撃を受けた場合、けがをした側だけに外傷性白内障が起こることがあります。ボールや物が目に当たった、転倒して顔をぶつけた、異物が目に入って傷ついたといった外傷がきっかけになります。受傷直後ではなく、数カ月から数年たってから水晶体の濁りが目立つケースもあります。また、硝子体手術など一部の眼内手術後には、白内障が進みやすくなる場合があります。以前に受けた目のけがや手術は、白内障に左右差が生じた理由を考える手がかりになります。軽いけがだったとしても、時期や治療内容を覚えている範囲で医師へ伝えてください。ぶどう膜炎など目の病気ぶどう膜炎のように目の中で炎症が起こる病気は、白内障の発症や進行に関係します。炎症が片目に強く起きた場合は、その目の水晶体の濁りが目立つこともあります。ぶどう膜炎がある人の白内障手術は、炎症の状態や網膜、黄斑などの状態を踏まえて時期を慎重に検討します。見えにくさの一部が白内障以外の病変による場合は、手術を受けてもすべての症状が改善するとは限りません。過去に目の炎症やほかの眼疾患を指摘されたことがあれば、受診時に伝えましょう。全身疾患や薬剤による影響糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患は、白内障が若い年代で起こったり、進行が早まったりする要因になります。また、ステロイド薬も、使用方法や使用期間によって白内障の発症・進行に関係する場合があります。ステロイド薬に関連する白内障では、水晶体の後ろ側が濁る後嚢下白内障がみられることが知られています。これらの要因が必ず片目だけに影響するわけではありません。ただし、もともとの水晶体や目の状態に左右差があると、片方の症状が先に目立つことがあります。薬が白内障に関係している可能性があっても、自己判断で中止してはいけません。処方した医師と眼科医の双方へ相談し、お薬手帳などを受診時に持参しましょう。紫外線や放射線の影響紫外線を浴びる機会が多い環境も、白内障の進行に関わる要因のひとつと考えられています。屋外での作業やスポーツが多い方では、生活習慣や目に入る光の量の違いから、左右で影響に差が出ることもあります。医療や工業の現場で放射線に曝露する環境にある場合も同様です。日常的にできる対策としては、紫外線カット機能のあるサングラスやつばの広い帽子の使用が挙げられます。すでに見え方の変化がある場合は、対策と並行して眼科で状態を確認しておくと安心です。先天的な要因生まれつき、あるいは幼少期から片目だけに水晶体の濁りがみられる場合は、先天的な要因が関係していることがあります。遺伝的な要素のほか、胎内での感染や代謝異常などが背景にあることも知られています。片眼性の場合、もう一方の目がよく見えているために本人も周囲も気づきにくく、発見が遅れることがあります。特に小児では、見えにくい状態が続くと視機能の発達に影響する可能性があるため、気になる様子があれば早めに眼科で相談してください。片目の白内障にみられる症状と受診目安白内障は、多くの場合、痛みを伴わずゆっくりと進行します。そのため、見え方の変化に慣れてしまい、受診が遅れることもあります。症状の現れ方は水晶体が濁る位置や程度によって異なります。代表的な症状に加え、白内障以外の病気も考えられる変化を紹介します。受診の目安主な症状早めに眼科で相談かすみ、ぼやけ、まぶしさ、光のにじみ、片目で見たときの二重像、色の見え方の変化、距離感のつかみにくさできるだけ早く受診急な視力低下、視野の欠け、黒い影の広がり、飛蚊症の急な増加、光が走って見える、強い目の痛みや充血、頭痛や吐き気を伴うかすみやぼやけ白内障が進むと、霧がかかったようにかすむ、物の輪郭がぼやける、ピントが合いにくいといった症状が現れます。眼鏡のレンズが汚れているように感じても、レンズを拭くだけでは見え方が変わりません。片目だけ進行している場合は、左右の目を交互に隠したときに見え方の違いを感じることがあります。ただし、かすみやぼやけは、ドライアイや角膜、網膜などの病気でも起こる症状です。見えにくさが続いている場合や以前より悪化している場合は、白内障と決めつけず、眼科で原因を調べてもらいましょう。まぶしさや光のにじみ水晶体が濁ると、目に入った光が散乱しやすくなります。その結果、以前より光をまぶしく感じる、街灯や車のヘッドライトがにじむ、光の周囲に輪が見えるといった症状が現れることがあります。視力検査の数値が比較的保たれていても、まぶしさによって生活に支障が出るケースはあります。片目だけ白内障が進むと、左右で光の見え方が異なり、特に夜間運転や暗い場所から明るい場所へ移った際に違和感が生じやすくなります。運転時の見え方に不安がある場合は、無理を続けず早めに眼科へ相談してください。二重像や色の見え方の変化片目で見ても物が二重や三重に見える症状は、白内障によって起こる場合があります。水晶体の濁りによって光が均一に通らず、1つの像が複数に分かれて見えるためです。一方、両目で見たときだけ二重になる場合は、眼位や眼球運動に関係する病気なども考えられます。診察時には、片目でも二重に見えるのか、両目で見たときだけなのかを伝えましょう。白内障が進むと、白いものが黄ばんで見える、色の鮮やかさが低下するといった変化が生じることもあります。変化がゆっくり進むと本人は気づきにくいため、片目ずつ白い壁や紙を見ると、左右の色味の違いがわかる場合があります。白内障以外も疑われる急な症状加齢性白内障は通常ゆっくり進むため、数分から数日で起こる急な視力低下は典型的な経過ではありません。突然視野が欠けた、黒い影が広がった、飛蚊症が急に増えた、稲妻のような光が見えるといった症状は、網膜裂孔や網膜剥離などでも起こります。強い目の痛みや充血、頭痛、吐き気を伴う場合も、速やかな診察が必要です。症状が落ち着くまで待ったり、次回の定期受診まで様子を見たりせず、できるだけ早く眼科へ連絡してください。突然の見え方の変化には、治療開始の遅れが視力に影響する病気も含まれます。片目だけの白内障を放置した場合の影響反対の目がよく見えていると、片目の見えにくさをそのままにしてしまいがちです。しかし、左右差が大きくなると、視力の問題にとどまらず日常生活のさまざまな場面に影響が及ぶことがあります。距離感や奥行きがつかみにくくなる両目は、それぞれ少し異なる像を脳で組み合わせることで、距離や奥行きを捉えています。片目の視力が低下したり、左右の見え方に大きな差が生じたりすると、このはたらきが十分でなくなり、物との距離をつかみにくくなることがあります。段差の高さがわかりにくい、物をつかもうとしたときに位置がずれる、飲み物を注ぎにくいといった変化は、その手がかりです。階段の上り下りで転倒しやすくなったり、運転中に車間距離をつかみにくくなったりすることもあるため、不安がある場合は早めに眼科医へ相談しましょう。眼精疲労や頭痛につながることがある左右の見え方に差があると、無意識のうちに見えるほうの目に頼り、目に負担がかかりやすくなります。その結果、目の疲れを感じやすくなったり、頭痛や肩こりを自覚したりする方もいます。また、左右の度数差が大きい状態は眼鏡で補いにくく、眼鏡を作り替えても快適に見えないことがあります。「年齢のせい」と考えていた不調が、見え方の左右差に関係している可能性もあるため、一度検査を受けてみるとよいでしょう。片目だけの白内障で手術を考える目安白内障が見つかったからといって、直ちに手術が必要になるとは限りません。手術の時期は、視力検査の数値だけではなく、生活への影響や眼鏡による改善度、白内障以外の病気の有無などをもとに検討します。片目だけの場合も、左右の見え方と本人の希望を踏まえて決めることが大切です。日常生活への支障の大きさ白内障手術を考える主な目安は、見えにくさによって日常生活に支障が出ているかどうかです。仕事で細かな文字が読みにくい、夜間運転で標識を確認しづらい、調理や家事で手元が見えにくいなど、必要とする見え方は生活によって異なります。反対の目がよく見えていても、片目の見えにくさによって必要な作業ができないのであれば、手術を検討する理由になります。一方、生活に不自由がなく、検査でも急いで治療すべき状態ではなければ、定期的な診察で経過を見ることもあります。困っている場面を具体的に伝え、適切な時期を眼科医と相談しましょう。眼鏡で改善しにくい見え方白内障の初期には、水晶体の変化によって眼鏡の度数が合わなくなり、レンズを調整すると見え方が改善する場合があります。しかし、水晶体の濁りが強くなると、度数を変えても視力やかすみ、まぶしさなどを十分に補いにくくなります。眼鏡を作り替えても短期間で見えにくくなる場合や、眼鏡をかけた状態でも視力が低下している場合は、手術を考える材料になります。ただし、網膜や視神経などに病気があると、白内障手術後も見え方の改善が限られる可能性があります。眼鏡による矯正結果と、目全体の検査結果を合わせて判断することが重要です。眼科検査でわかる目の状態眼科では、裸眼視力や矯正視力に加え、水晶体の濁り方、角膜、眼圧、網膜、視神経などを調べます。白内障の程度と本人が感じている見えにくさが一致しているか、ほかの病気が視力に影響していないかを確認することで、手術後に期待できる見え方を検討しやすくなります。白内障の濁りが強く眼底を観察しにくい場合や、糖尿病網膜症など眼底疾患の診断・治療に支障がある場合は、生活上の不便が強くなくても手術を検討することがあります。手術の必要性は視力の数値だけで一律に決まるものではありません。検査結果や生活状況、本人の希望をもとに判断します。片目ずつ手術する場合と両目を手術する場合両目に白内障がある場合、片目ずつ時期をずらして手術する方法と、両目の手術を近い時期に行う方法があります。どちらにも特徴があり、目の状態や生活の状況によって適した進め方は異なります。ポイント片目ずつ手術する場合両目を近い時期に手術する場合見え方の確認術後の見え方を確認し、反対の目のレンズ度数を検討しやすい左右の見え方をそろえやすい術後の左右差反対の目の手術までの間、左右差が生じることがある左右差が生じる期間が短い通院・生活の負担手術と通院の機会が2回に分かれる通院や術後管理をまとめやすいなお、片目だけに白内障がある場合は、その目のみ手術を行うのが基本です。進め方は目の状態や全身の状況、生活のご都合によって異なるため、担当医と相談しながら決めていきます。片目だけ手術する際の注意点片目だけ白内障手術を受ける場合は、手術をする目だけでなく、手術をしない目との見え方のバランスも考える必要があります。術後に見やすくしたい距離によって、眼内レンズの選び方も変わります。術後の生活を思い浮かべながら、希望する見え方を医師へ伝えましょう。左右の度数差による違和感白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入します。片目の手術後に、手術をしていない目との度数差が大きくなると、左右で像の大きさや鮮明さが異なる場合があります。その結果、眼精疲労やふらつき、距離感の違和感につながることがあります。度数差が大きい場合は、眼鏡で補いにくく、コンタクトレンズを検討することもあります。反対の目にも手術が必要な白内障がある場合は、その目の状態や生活への影響を踏まえて、反対の目の手術時期を相談します。左右差がどの程度生じる可能性があるか、術前に説明を受けておきましょう。生活に合わせた眼内レンズ選び眼内レンズには、主に1つの距離に焦点を合わせる単焦点眼内レンズと、複数の距離を見やすくする多焦点眼内レンズがあります。単焦点眼内レンズでは、遠方、中間、近方のどこを重視するかを決め、焦点が合わない距離は眼鏡で補うのが基本です。多焦点眼内レンズにも見え方の特徴や注意点があり、すべての人に適しているわけではありません。片目だけ手術する場合は、手術をしない目がどの距離を見やすいかも考慮します。運転、パソコン、読書、家事など、日常で優先したい場面を具体的に伝えると、眼内レンズの度数を検討しやすくなります。眼鏡の使用を減らしたいという希望だけで決めず、目の状態や左右の見え方を踏まえて選びましょう。術後の眼鏡作成や運転の再開時期手術後は、見え方が安定するまでに一定の期間が必要です。新しい眼鏡を作るのは、目の状態が落ち着いてからが基本となります。生活上の必要があって早めに作る場合は、その後に度数の調整が必要になることもあると理解しておきましょう。運転の再開時期についても、術後の視力や目の状態を確認したうえで判断します。自己判断で早く再開せず、診察の際に生活での必要性を伝え、医師の指示に従ってください。手術をしない目の経過観察片目だけ白内障手術を受けても、反対の目に白内障が起こらないとは限りません。すでに軽い濁りがある場合は、時間の経過とともに進行し、眼鏡の度数や左右の見え方が変わることがあります。手術をした目が見やすくなったことで、反対の目のかすみを以前より強く感じる人もいます。手術をしていない目についても、定期的な視力検査や診察を受け、生活への影響を見ながら治療時期を検討します。手術後の目も、傷の治りや眼圧、網膜の状態などを調べる必要があるため、医師から案内された術後診察を継続してください。まとめ | 片目だけ見えにくい場合も眼科へ相談しよう白内障は両目に生じることが多い病気ですが、水晶体の濁り方や進行速度には左右差があり、片目だけ症状が目立つ場合があります。加齢による差のほか、過去のけがや目の炎症などが関係していることもあるため、見え方だけで原因を判断することはできません。かすみやまぶしさ、二重像などが続くときは、眼科で検査を受けましょう。左右差をそのままにすると、距離感がつかみにくくなったり、目の疲れや頭痛につながったりすることもあります。急な視力低下や視野の欠け、飛蚊症の急な増加は白内障以外の病気も考えられるため、早めの受診が必要です。当院では、白内障の診察や治療についてご相談を承っています。片目だけの見えにくさや手術時期、眼内レンズの選び方でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。記事監修・執筆:院長 医学博士 堤 孝之(眼科専門医) ※当院の診療方針や医師の詳しい経歴については 院長紹介ページ をご覧ください。